(過去記事)「翻訳事典 2013年度版」掲載記事
- 杉本 詠美
- 2022年3月31日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年6月23日
「翻訳事典 2013年度版」にインタビューが掲載されました

(※ココログに2012年1月に書いた記事の転載です。ブログのお引っ越しのために、過去記事をいくつかこちらに移しています。)
「翻訳事典2013年度版」にインタビュー記事を掲載していただきました。毎年恒例の「翻訳で活きる人・ヒト・ひと」のコーナーです。やまねこ翻訳クラブやクラブ会員有志で行っている読み聞かせのことなどをお話ししています。
「翻訳で活きる人・ヒト・ひと」のコーナーでは、ジャンルも言語もさまざまな8人の翻訳者がとりあげられています。共通の質問もいくつかあって、資格や検定のことも尋ねられて冷や汗をかきました(^^;)。なにしろずっと英語は苦手科目だったので、怖くて試験なんて受けたことがないんです。でも、文芸翻訳の場合、何点あったら安心とか、何点なければプロにはなれない、ということはないと思います。英語力に今ひとつ自信のない方も、ひたすら読んで調べて訳すうちに力はついていくんじゃないでしょうか。翻訳者へのプロセスとして、ほかのひとの訳をチェックしたり、下訳をさせていただいたり、そういう過程でテキストで学ぶ以上の力もついてきます。「英語力」と言われるといまだに自信のないわたしも、センター試験の問題を見たり、息子が大学で読んでいる英語論文を見たりすると、「あ、学生時代よりは格段にわかるようになってるわ~」とホッとします。仕事になれば自信のないものを納品するわけにはいかないので、「これでいい」と思えるところまで必然的に最大限の努力を重ねることになります。万全と思っても誤訳の可能性、表現がたらない可能性はあるので、そのときそのとき必ず100%以上を目指すことになるんですね。なので、自信のあるなしにかかわらず、力はついていくんだと思います。「なりたい」という気持ちと「なれるかしら」という気持ちのあいだで揺れているひとは、ぜひ「なりたい」気持ちに賭けてがんばってください。
共通の質問の中に、「役に立った本、教材」というのもありましたが、役に立つ本はそれこそいくらでもあるし、教材のどれがいいというのもわかりません。とはいえ、こちらは「ない」とも言えないので、読者の方にはすみませんが、個人的に思い入れのある本を2つ挙げました。ひとつは上田敏の『海潮音』。高校時代に訳詩の美しさに魅せられて覚えた「落葉」や「わすれなぐさ」。今、どんな翻訳をしたいかと言われれば、あの詩が浮かんできます。もうひとつの本はフロリス・ドラットル博士の『妖精の世界』。これも高校の図書館で見つけた本です。どうしても欲しかったのに絶版だとわかり、(当時はコピーもまだ高かったので)たぶん1年以上貸し出し延長を繰り返して、ノートに書き写しました。妖精研究というと、のちにもっとよい本がいくつか出ていると思いますが、論文という性格的なものもありますし、なにしろ時間をかけて書き写したので、英文学と英国文化の一端にせよ、その時期どっぷりと浸っていたことが今につながっている気がします。つまり、この2冊を挙げたのは、翻訳者を志す方にそういう「出合い」をたいせつにしていただきたいと思ったからです。
わたしはこれまでにたくさんの運と偶然に恵まれてきました。でも、同時にそれは必然であった気もしています。運はただ待っているだけではなかなか向いてきませんが、自分から踏みだせば、意外なほどすぐにやってきます。幸運の女神さまが通りかかったら迷わず前髪をひっつかむ! するとまた次の女神さまがやってきます(笑)。今までに恵まれた幸運のなかでも何よりうれしいのは人との出会いです。わたしを支えてくださっているたくさんのみなさまに感謝します。
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