新刊お知らせ『さあ目をとじて、かわいい子』
- 杉本 詠美
- 4月30日
- 読了時間: 3分
先日お知らせした読み物が刊行になりました。
深い感動を呼んだ『永遠に生きるために』で鮮烈なデビューを飾ったサリー・ニコルズの作品。主人公は11歳ですが、対象は中学生以上です。
装画は、『#マイネーム』『わたしが先生の「ロリータ」だったころ 愛に見せかけた支配について』『ガールズ・ルール 愛され女子でいるには』などの作品を手がけた須藤はる奈さんです。

主人公は11歳の少女、オリヴィア。物語はオリヴィアが「16番目の家」にやってくるところから始まります。態度が悪く、粗暴でわがまま、些細なことですぐにキレる。そんなオリヴィアに、16番目の家となった里親家族――父親で穏やかな性格のジム、オリヴィアと同い年の息子ダニエルとあどけなさの残るその妹ハリエット、オリヴィアと同じく里子で乳飲み子を抱えた18歳の未婚の母グレース――と同様、読者も面食らうことでしょう。あるいは、嫌悪感を抱いても不思議はありません。オリヴィア自身、思っています。自分を好きになってくれる人など誰もいない。誰も自分をほんとには愛してくれない。「あたしは邪悪だから」と。
オリヴィアはいつも不意の攻撃に身構え、自分を守ろうと最大限に神経をとがらせています。新しい家に来て、わずかな音や慣れないにおいにも過敏に反応するオリヴィア。彼女の感じる不気味な気配は、単なる気のせいでしょうか。やがて体験する恐ろしいできごとも、トラウマから来るただの幻聴、妄想でしょうか?
じつはこの家には昔、イギリス史上最悪と言われる連続殺人鬼(実在した人物です!)が一時期暮らしていました。物語はじわじわと、身の凍るホラーの様相を呈してきます。
そして、そのあいまに、これまでオリヴィアが暮らしてきた15の家や施設での体験が、時をさかのぼるように、ひとつひとつ語られていきます。そこから、オリヴィア自身も気づいていない悲痛な声が、読者のみなさんにも届くでしょうか。愛されたいと願いながら、愛を失うことへの不安から、手をさしのべてくれた人を傷つけ、遠ざけ、自分をどんどん追いこみ、追いつめ、狂気の淵へと向かっていくオリヴィア。その先にはたして光はあるのでしょうか。
解説は、大阪公立大学社会福祉学教授で、子どもの社会的養護について日本だけでなく英国の事情にも詳しい伊藤嘉余子先生に書いていただきました。社会的養護についてのわかりやすい説明に加え、物語の中のオリヴィアや若い読者の心に寄り添った温かい文章に胸が熱くなりました。伊藤先生には、この場を借りて心よりお礼申し上げます。
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