top of page

新訳『おちゃめなふたごのすてきな休暇★さいごの秘密』

  • 執筆者の写真: 杉本 詠美
    杉本 詠美
  • 2月15日
  • 読了時間: 4分

 原文との突き合わせのお手伝いをさせていただいた本が、刊行になります。

 ポプラキミノベル「おちゃめなふたご」シリーズ(イーニッド・ブライトン作/田中亜希子訳/ポプラ社)の第4巻『おちゃめなふたごのすてきな休暇★さいごの秘密』です。



 今回の新訳第4巻は、原作、旧訳の第5巻(『おちゃめなふたごのすてきな休暇』)と6巻(『おちゃめなふたごのさいごの秘密』)をあわせた合本になっています。つまり、これで新訳はシリーズ完結。今回も超超キュートな加々見絵里さんのイラストは、カバーも帯もフィナーレ感にあふれています。


 さてさて、お話のほうはというと……「すてきな休暇」でふたごたちは4年生になりました。今学期もまた個性派ぞろいの転入生がやってきます。まずは、運転手つきの高級車でやってきたアンジェラ・フェイバリー。その名のとおり容貌はまるで天使のようだけど、性格のほうはどうも「天使」とは言えず。なにしろ、家がお金持ちなことや自分が美人なことをかなり鼻にかけているようす。そのアンジェラに対抗するように、ひどくお高くとまった言動をするポーリーン・ビンガム=ジョーンズは、アンジェラともども、ほかの4年生たちからたちまちけむたがられてしまいます。アイリーン・パターソンはふたりにくらべたら地味な存在ですが、新しくやってきた、厳しくて、生徒たちにとってはひどく意地悪とも思える寮母先生(これまでの寮母先生は休み中に病気になってしまいました)の娘だということで、「告げ口や」の汚名をきせられ、そのせいか、物言いが喧嘩腰になることもしばしば……。こう書くと、なんだか今期のクラスは嫌な空気だなあ、と思われそうですが、最後に遅れてやってきた自由気ままなフランス人のクロディーヌは、みんながあっけにとられるようなあれこれをやってのけ、まわりをふりまわし、笑いをふりまき、物語の愉快なガス抜きになっています。こんな面々を迎えて、進級組のみんなは新たな成長をうながされます。もちろん、転入生たちも。


「さいごの秘密」は、楽しさ満載の最終話。ふたごたちはいよいよ5年生です! 自分を天才詩人と思いこんでいる転入生のアンマリー・ロングデン、下の学年から進級してきた、こちらはほんものの音楽の天才フェリシティ・レイ、なんと6年生から落第してきた、とっつきにくいアルマ・プディンと、今期もクセ強の新顔を加えた5年生の毎日は、もちろんまたまた波乱、波乱。5年生となっただけに、下級生たちとの関係もなにかとたいへんです。2年生にはフランス人クロディーヌの妹で、アントワネットも転入してきて、姉におとらぬいたずらっ子っぷりを発揮します。シリーズを通じ、寮生活の夜といえば「真夜中のパーティー」ですが、最終話のクライマックスにはそれだけでなく、「おちゃめなふたご」史上最もスリリングな夜がやってきます。そこでのマドモアゼルの活躍に注目を!


 こうして(なぜか最終学年手前で)ラストを迎えた「おちゃめなふたご」シリーズ。小生意気な女の子たちのドタバタ劇?と見えるけれど、あとがきでも触れられているように、原書は第1巻から6巻までが、まさに第二次世界大戦のさなかに刊行されています。この時期、イギリス都市部の子どもたちは5年にもわたり田舎に疎開させられました。そんな暗い時代の影を露ほども感じさせない、華やかで、愉快で、ワクワクがいっぱいつまった学校生活。ラクロス、テニス、劇や音楽、真夜中のパーティーや先生たちにしかけるいたずら。この物語がどんなに当時の子どもたちの心を救ったかと考えると、作者や出版社の心意気を感じます。正直、時代と国が違うとはいえ、どうも感心できないと感じるエピソードもたくさんありましたが、そんなモヤモヤした気持ちも帳消しにするくらい、この物語の意義は大きかっただろうなと、新訳シリーズを伴走し終えて、しみじみ思いました。


 最後に、声を大にして言いたい。「おちゃめなふたご」シリーズにはたくさんの女の子たちが登場しますが、わたしの絶対的な推しは、ふたごのいとこ、アリスンです!!

「ふわふわ頭ちゃん」なんて、みんなにからかわれる(からかわれつづける)アリスンは、一見、かわいいだけ、かわいいもの好きなだけの軽佻浮薄な、中身のない女の子のように書かれていますが、その実、さびしい思いをしている子にそっと寄り添い、誰にも分けへだてなく優しい、深い思いやりのある子。そして、何度も傷つき、作中のだれより大きな成長を見せています。書かれ方と描かれ方にギャッブがあるけれど、作者ブライトンさんも、アリスンを愛しく思えばこそ、そんなふうに登場させたのでは? ああ、わたしのアリスンが読者のかたがたにもぜひぜひ愛されますように!


コメント


bottom of page